民間企業の製品・技術の活用が期待される開発途上国の課題

(課題シートNo. 07-245-1705)

対象分野 農業
対象分野詳細 農業機械(灌漑用ポンプ、ドローン等含む)
SDGsゴール 1. 貧困をなくそう
2. 飢餓をゼロに
9. 産業と技術革新の基盤をつくろう
対象国 メキシコ
対象地域(州・県名) メキシコ南部地域(チアパス州、オアハカ州、ゲレロ州、タバスコ州)
対象国・地域の現状 メキシコは、日本の22倍の農用地を有し、GDPの3.5%を農業が占める農業国である。主要な輸出農産物はアボカド、トマト、チリ、ペッパーなどであり、特にアボカドは世界の収量の30%以上をメキシコが占めている。日本でも親しみ深いコーヒーやカカオも栽培されており、コーヒーは世界11位、カカオは世界13位の収量を誇る。
メキシコにおける農業の手法・収益性は、北部と南部では大きな違いがある。メキシコ北部では、企業的な大規模経営で商業化が進んでおり、プロセスも機械化され生産性は高い。一方、南部では、小規模農家が多く、農業生産性が低い。
メキシコ南部地域では、主にコーヒー(チアパス州、ベラクルス州、オアハカ州でメキシコ収量全体の約70%を占める)やカカオ(タバスコ州、チアパス州、ゲレロ州でメキシコ収量全体の約100%を占める)が栽培されている。チアパス州にてコーヒー(兼自家消費用のとうもろこし)農家に対してメキシコ事務所が実施したアンケート調査では、調査地域における1ヘクタールあたりの単収が、コーヒー・とうもろこし共に国全体平均よりも低いことがわかった。理由としては、機械化の遅れ、水利施設の不足、農地土壌の劣化等が挙げられる。特に、とうもろこし栽培では化学肥料が大量に使用され続け、土壌の生産性が低下している。土壌に関しては、化学分析等も実施されておらず、科学的な知識・知見が蓄積されていないことが明らかになった。また、コーヒー栽培では、さび病などの病害虫も大きな被害をもたらしている。
さらに、農家自身で作物を評価・加工する技術がないため、中間業者・加工業者に安価で作物を買い叩かれているのが現状である。その結果、ある年は1日あたりの所得が約114ペソであった農家もあり、これはメキシコの日額最低賃金の173ペソを下回っている。
地域コミュニティという点を鑑みると、南部地域は先住民の多い地域でもあり、農業従事者も例外ではない。調査地域でも、ツェルタル語、ツォツィル語が日常生活に使われていた。また、多くの農家が組織などには属さず個人で農作業に従事していた。
以上のことから、南部地域での農業生産性が低い主な要因としては、山間の地域および農家ごとの農地が小さく、機械や灌漑施設が整備されていない場所が多いという点、科学的な知識・知見や農作物の評価・加工技術が蓄積されていない点、また農家間の連携が十分に行われていないという点が挙げられる。
解決すべき課題 南部農村地域における、以下を要因とした農業生産性の低さ
・小規模農家が多いことに起因する機械化の遅れ、水利施設の不十分さ
・農業に関する科学的知識・知見の欠如
・農作物の販売単価向上を目的とした品質評価手法、付加価値向上のノウハウ欠如
・持続的な農業に対する意識の低さ(化学肥料の大量利用など)
・地域コミュニティでの不十分な組織形成、イノベーションに対する抵抗
活用が想定される製品・技術・ノウハウ ・南部地域における小規模農家の農業収益改善に寄与しうる機械・手法
・持続的な農業のために必要な技術・手法(土壌分析・改良、病害虫対策などを含む)
・農作物(カカオ、コーヒー等)の収益改善に寄与しうる付加価値向上のためのマーケットニーズ調査、農作物の評価・加工技術およびその販売のためのノウハウ
市場規模
関連する公的機関 国立農牧林業研究所(Instituto Nacional de Investigaciones Forestales, Agricolas y Pecuarias: INIFAP)、州政府の農業・産業関連部門(Secretaria de Agricultura など)、大学
関連するJICAの方針 グローバルアジェンダとして掲げる「農業開発・農村開発(持続可能な食料システム)」に合致する
関連するODAプログラム・プロジェクト
留意点
リスク
備考 参考情報として、メキシコでは大都市部と地方の格差が大きく、南部はメキシコ内でも所得水準が特に低い地域である(2020年の州別平均収入データでは、メキシコトップのヌエボレオン州の19,709ペソ/月に対し、最下位のチアパス州は7,665ペソ/月であった(INEGI, 2020)。
また、メキシコ政府は、農業従事者向けに”Produccion para el Bienestar(農業農村開発省による小規模農家支援・貧困対策のプログラム)”や、”Sembrando Vida(福祉省による貧困地域の植林・農牧業支援のためのプログラム)”などの複数プログラムを展開しているが、調査地域をはじめ一部農村部には行き届いていない。
参考動画 [VR360度] メキシコにおけるコーヒー栽培の課題(3分15秒)

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