民間企業の製品・技術の活用が期待される開発途上国の課題

(課題シートNo. 07-024-0139)

対象分野 農業
対象分野詳細 加工・流通・輸出振興
SDGsゴール 1. 貧困をなくそう
9. 産業と技術革新の基盤をつくろう
15. 陸の豊かさも守ろう
対象国 ラオス
対象地域(州・県名) ラオス全土
対象国・地域の現状 <ラオス農業のポテンシャル>
ラオスの農業は小規模農家による自給的な農業が大半を占めており、肥料や農薬等の十分かつ適切な使用による栽培技術が十分に浸透していないため、生産は天候に大きく依存し、品質・生産性共に低い。半面、肥料や農薬等の使用が極端に少ないことから、有機農業振興の素地はある。また、亜熱帯でありながら山岳の多い国土のため気候の多様性に富み、特定の気候を必要とする薬用植物などの生育に適した地域もあり、幅広い作物を対象に農業振興をしていく高いポテンシャルを持つ。
<課題>
(1)農業資材を近隣諸国からの輸入に依存
近年では外資系企業による大規模プランテーションでの商品作物栽培と近隣諸国への輸出も増加傾向にあるが、肥料については年間8,615万USDが輸入されている(ラオス商工省輸入統計2019年)など、農業資機材の多くを近隣諸国からの輸入に依存している。
(2)食物検疫や品質検査が脆弱
ラオス産の野菜や果物については信頼できる食物検疫制度がないことから、近隣諸国から青果物としての輸入を拒否されるケースがある。国内においても食の安全確保の仕組みが構築されていない。
(3)未熟な加工技術
内陸国であるため物流コストの競争劣後性を解消するには、農産品の高付加価値化が必要とされているが、加工技術が未熟なため加工食品の多くを輸入している。また、海外市場に求められる品質をクリアできないため、原料や一次加工程度での輸出となり輸出商品単価が低い。
(4)コールドチェーンの未整備
適切に温度管理された低温流通・保管システムの未構築等が障壁となり、国内に流通する農産品に偏りが出たり、鮮度や質が落ちた状態で消費者に届いている。
解決すべき課題 ・有機農業、薬用植物の栽培等の付加価値の高い農業の振興。
・加工技術の導入を通した農産品高付加価値化による輸出振興。
・食の安全確保の仕組みや信頼のおける食物検疫制度の構築。
・国内輸送、輸出等の流通システムの構築。
・上記等を含むフードバリューチェーンの構築。
活用が想定される製品・技術・ノウハウ ・有機農業、付加価値を高い農作物栽培。ラオスで生産可能な商品作物の選定・栽培・買付(現地企業・農家への技術指導含む)
・国産肥料(有機肥料)の製造技術
・ラオス固有植物の商業利用・高付加価値化のための製品・技術
・農産品加工(高付加価値化)のための製品・技術
・国外市場に求められる品質をクリアした商品開発の技術・ノウハウ。
(例:コーヒーはラオスの主要な輸出品目であるが、豆の選別や焙煎後の香りの保存するパッキング技術等がないため、生豆で輸出されている状況)
・市場需要把握・生産管理・需給マッチングを可能にするマーケットプレイスの構築技術
・低温輸送・保管システム
・農業分野におけるDX技術の活用による物流円滑化や農作業効率化を図るための技術・ノウハウ
市場規模 ラオス商工省輸入統計(2019年)
飲料水(2億800USD)、砂糖(8,800万USD)、木材・木材製品(8,800万USD)、紙・紙製品(8,700万USD)、肥料(8,600万USD)、食品残渣(8,600万USD)、果物(5,700万USD)生鮮野菜(2,800万USD)、穀物製品(2,000万USD)、加工食品(1,200万USD)

ラオス商工省輸出統計(2019年)
飲料水(2億2900万USD)、天然ゴム(2億1,700万USD)、バナナ(1億9700万USD)、砂糖(1億2,300万USD)、肥料(1億1,400万USD)、キャッサバ(1億1,100万USD)、果物(8,900万USD)、たばこ(8,400万USD)、塩(7,600万USD)、コーヒー豆(6,400万USD)、メイズ(4,200万USD)、野菜(2,900万USD)、穀物製品(2,800万USD)、米(2,400万USD)、タピオカ粉(2,000万USD)、キャベツ(1,600万USD)、ねぎ・ニンニク(1,000万USD)
関連する公的機関 農林省(MAF)、各都県農林局(PAFO)、工業商業省(MOIC)、各都県商工局(DOIC)
関連するJICAの方針 対ラオス人民民主共和国国別開発協力方針(2019年4月)に掲げる重点分野のひとつ「産業の多角化と競争力の強化、そのための産業人材育成」において、フードバリューチェーン構築および農業振興に資するものと合致する
関連するODAプログラム・プロジェクト 技術協力プロジェクト「クリーン農業開発プロジェクト」(2017〜2022)
技術協力プロジェクト「サバナケット県における参加型農業振興プロジェクト」(2017〜2022)
中小企業支援事業「有用植物資源の持続的な商業活用に向けた普及・実証事業」(2018〜2020)
中小企業支援事業「広東アブラギリ種子の多益利用事業案件化調査」(2018〜2019)
「東南アジア地域におけるWith/Post COVID-19社会のフードバリューチェーン開発に係る情報収集・確認調査」(2021年〜2022年)
稲種子管理アドバイザー(2021年〜2024年)
東南アジア地域地方創生とODA との連携の可能性に係る情報収集・確認調査(2019〜2021)
留意点 (1)国内のマーケット規模が近隣諸国に比べて小さく、内陸国であり物流コストが高い。
(2)農家と契約栽培による原料調達をする場合、農家は外国人とのビジネス経験が乏しく長期的な視点で取引先を選択することが難しいため、契約反故の事例(日本企業よりも高値を提示した近隣諸国バイヤーに契約対象の農作物を先に販売したケースや、国際市場のトレンドに左右され一時的に高値を示す農作物に栽培作物を変更したケースなど)が聞かれている。
(3)ラオスの農業は生産技術自体が低く、外資系企業が求めるロットでの安定生産・供給や品質が課題となることが多いため、加工による付加価値向上だけでなく生産段階からの技術支援が必要となる可能性が高い。
(4)農業生産からラオス国内での販売を想定するビジネスモデルは小売・卸外資規制に留意する必要がある。
(5)ラオス農家は農薬や化学物質に対し健康を害するものとの意識が強く、生産性向上のための肥料使用とは言え、コストや手間を考えると使用せずに楽な方法を好む農家もあるため、彼らを顧客やビジネスパートナーと想定する場合は留意が必要。
リスク
備考
参考動画

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