民間企業の製品・技術の活用が期待される開発途上国の課題

(課題シートNo. 04-469-0350)

対象分野 水の浄化・水処理
対象分野詳細 水供給・上水道(水源開発、浄水処理、無収水対策、配水管理、水質検査、顧客管理等)
SDGsゴール 6. 安全な水とトイレを世界中に
対象国 モロッコ
対象地域(州・県名) モロッコ全土
対象国・地域の現状 乾燥・半乾燥地帯に位置しているモロッコでは、年間降水量が地中海性気候の北部で700mmであるのに対し、大西洋沿に位置する中西部や南西部で300mm〜400mm、内陸の山間部では10mm前後と少なく、水資源の地理的な偏在が見られる他、年毎の降雨量の変動も大きく旱魃も頻発している。気温変動による雨量の変化により過去30年間で表流水は20%減少しおり、地方のオアシスの枯渇や地下水位の低下が大きな問題となっている。

一方、モロッコでは経済発展に伴う人口増加により、特に都市部や周辺のベッドタウンで水需要が急激に増加しており、2008年には125億㎥だった水需要予測は2020年には160億㎥と試算されている。水資源の確保と適切な管理は、同国の開発の重要課題として掲げられており、2021年2月9日にも、国家予算により5つのダムの新規建設を発表するなど、モロッコ政府の水資源問題への関心は非常に高い。

安定した水資源の確保及び水供給能力の向上が喫緊の課題となっているモロッコであるが、他方でモロッコの河川は水源部の地質が石灰質であり、カルシウムと塩分濃度が比較的高く、加えて水量が少ないため汚染されやすい傾向にある。

貴重な水資源の確保という観点から、塩分濃度が高い原水の淡水化技術の促進は重要政策の一つであり、2015年にはスペイン資本によるアガディールでの同国最大の海水淡水化プラントの建設が発表されるなど、モロッコ政府の淡水化事業に寄せる期待は高いものの、淡水化プラントは開発コストが高く、上下水道システム全体への影響も大きいため、経済効率の観点から課題を抱えている。
解決すべき課題 水資源の確保・適切な管理、経済効率性の確保

中東などで採用されてきた蒸発法は化石燃料に起因するエネルギーを大量消費することから、アフリカでの導入は難しかったが、近年は逆浸透法の発展により蒸発法より低価格かつ小スペースでの造水が可能となり、近年は技術革新に伴って造水効率も上昇している。逆浸透膜技術では複数の本邦企業が世界シェアの上位に位置しているため、本邦企業の技術活用が期待できる分野である。

しかし、依然として脱塩化はコストがかかるゆえ、既存の水道施設との接続、施設の維持管理体制や環境影響評価、水道料金への反映と工業化等による対象国及び対象地域の経済的負担能力等に見合ったシステムの構築が求められている。
活用が想定される製品・技術・ノウハウ ・中規模程度の淡水化プラントや逆浸透性の淡水化技術(RO膜、高圧ポンプなど)
・維持管理に係る設備、薬品、フィルターなどは国内調達可能
市場規模
関連する公的機関 国営電力・水道公社(ONEE)
水利省など
関連するJICAの方針 対モロッコ国別援助方針重点分野(中目標)
:持続的な経済成長及び地域的・社会的格差の是正。

対モロッコ事業展開計画
:水・環境プログラム

国家水計画(モロッコ政府)
:淡水化プラント、ダム堆砂、水処理プラント、上水道整備などの水資源確保及び適切な管理にかかる開発計画。
関連するODAプログラム・プロジェクト 円借款:地方都市上水道整備事業、フェズ・メクネス地域上水道整備事業、下水道整備事業(III)
留意点 淡水化技術に関して、モロッコでは経済的効率性やプラント運営に関わることになるであろう水関連公団の事業規模の観点から中規模以上の淡水化プラントの需要が比較的高い。小規模の場合は経済的効率性や地方自治体の維持管理能力に見合ったシステムの構築が求められる。
リスク
備考 スペイン資本によるアガディールでの同国最大の海水淡水化プラントの建設では、三井物産プラントシステムから、東レ製RO製水処理膜や酉島製作所製高圧ポンプ等の海水淡水化プラント関連機器を購入するための資金について、JBICとクレディ・アグリコル銀行東京支店の協調融資によるバイヤーズクレジット(輸出金融)(総額約19.1百万ユーロ)が締結されており、クレディ・アグリコル銀行融資部分には日本貿易保険(NEXI)による保険が付保されている。

モロッコの都市部においては、淡水化を含む水部門は基本的にPPP(官民連携)で動いており、上記アガディール事業はBOT(Build Operate Transfer)方式であり20年間のO&M(Operation & Mangement)を受注している。淡水化以外の上下水道の分野でも都市部ではPPPが進んでおりカサブランカでは仏企業Suezのグループ会社であるLydec、ラバトではVeoliaグループのRedalがO&Mを受注し運営維持・管理を行っている。
参考動画

このページは、当機構が契約するスパイラル株式会社情報管理システム「スパイラル」が表示しています。