民間企業の製品・技術の活用が期待される開発途上国の課題

(課題シートNo. 10-227-0286)

対象分野 防災・災害対策
対象分野詳細 気象災害等(洪水、土砂災害、台風、高潮、海岸侵食等)
SDGsゴール 9. 産業と技術革新の基盤をつくろう
11. 住み続けられるまちづくりを
13. 気候変動に具体的な対策を
対象国 エルサルバドル
対象地域(州・県名)
対象国・地域の現状 エルサルバドルは、地震、火山噴火、洪水、土砂災害等の自然災害に対して高いリスクを抱えている。特に、1986年10月の地震及び2001年の二度の地震においては、両年共に1,000人を超える死者を出した。1,500年前の火山噴火により形成されたカルデラ湖に見られるように、同国は全土に亘りにシラス層が広がり、湖周辺では50cmの堆積層が見られ、地盤がもろく地すべり等の土砂災害が発生しやすい自然環境にある。
 また、ハリケーン等の影響による洪水・地滑り等の風水害が毎年発生しており、2009年11月に熱帯暴風雨Ida、2010年5月に熱帯暴風雨Agathaにより大きな被害が発生した。2011年10月には熱帯低気圧12Eにより、エルサルバドル観測史上最大の雨量が観測され、大洪水による住宅・道路交通網・上下水道・農業等に甚大な被害が広がった。更に2020年5月の熱帯暴風雨Amandaにおいては、30名の死者及び12,000名以上の避難者の発生に加え、67,000軒の家屋や各地の道路・インフラにも被害が及び、国家非常事態宣言が発令された。
 更に、ここ60年で海水面が7.8cm上昇していることが分かっており、満潮時の海水浸水や海岸沿家屋・土地の浸食が発生している。
解決すべき課題 多様な自然災害リスクを抱える当国においては、構造物の脆弱性の軽減、リスクの高い地点への防災的観点での適正技術の導入、災害発生時の被害最小化に資する体制・システムの構築等の必要性が指摘されている。
活用が想定される製品・技術・ノウハウ 耐震・免振建築技術
地すべり、道路斜面対策、砂防、観測モニタリング機器設置
災害早期警報システム、護岸対策
インフラへの災害投資、対策工ショーケース
市場規模
関連する公的機関 公共事業運輸省、住宅省等
関連するJICAの方針 第3回国連防災世界会議で仙台防災枠組(2015〜2030)が採択されて以降、防災は「コスト」ではなく、国や地域経済が持続的に成長するための「先行投資」であるとして、事前防災投資の重要性が国際的に共有されるようになった。
JICAは同枠組を踏まえ、特に事前防災投資の推進を通じ、年々世界的に拡大する災害による経済被害と死者・被災者の削減に向け、@大都市を中心とする資本集積地域への防災投資実現、A防災推進体制の確立、BBuild Back Better推進を三本柱(それぞれ仮称)として重点的に貢献していく方針(検討中)である。
また、対エルサルバドル開発協力方針において「持続的開発のための防災・環境保全」は重点分野であり、それに基づき「防災体制の強化プログラム」を実施している。同プログラムでは、地震、火山噴火、洪水、土砂災害等に対する強靭な社会の実現のため、公共インフラ及び住宅など「モノ」に焦点を当てた協力、コミュニティーの防災能力向上を目指した「ヒト」に焦点を当てた協力、防災関連機関の組織力強化といった多面的なアプローチを組み合わせ、ハード・ソフト両面からの自然災害への脆弱性の克服を目指した協力を実施している。
関連するODAプログラム・プロジェクト 「低・中所得者向け耐震住宅の建築技術・普及体制改善プロジェクト」
「公共インフラ強化のための気候変動・リスク管理戦略局支援プロジェクト」
「地震津波情報の分析能力強化」等
留意点 関係する機関が複数に亘る場合、責任の所在を明らかにするために時間を要する場合がある。初期の段階で核となる適切な先方機関を特定することが重要となる。
リスク
備考 エルサルバドルでは自然災害や気候変動リスクを考慮したインフラ整備を進めており、JICAの協力により中米地域共通の道路橋梁整備のための水理水文対策マニュアルを作成。2017年に開通したエル・プログレソ橋(全長200m)は、洪水被害軽減のために支柱は両岸のみとし、また耐震補強施工も対策済である(エルサルバドル公共事業運輸省実施)。
 地下貯水槽の設置による都市洪水コントロール、横ボーリング排水による地すべり対策工や斜面緑化等、JICA協力を含め先進的取り組みも蓄積しており、対策工モデルのショーケース化も可能と思料。
【参考】
 関連省庁・大学等から175名が日本における防災関連研修に参加済。地震学・耐震工学・津波分野での修士号取得者は23名。家屋の実物大モデル実験が可能な耐震実験施設(エルサルバドル大学、中米大学の2箇所)を活用した現地研究者と連携した実証実験も可能。潮位計2台、地震観測器93台を保有。津波警報発信は地震発生後15分以内。日伯方式地上デジタル方式採用。
参考動画

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