民間企業の製品・技術の活用が期待される開発途上国の課題

(課題シートNo. 08-018-0223)

対象分野 保健医療
対象分野詳細 保健医療
SDGsゴール 3. すべての人に健康と福祉を
対象国 タイ
対象地域(州・県名)
対象国・地域の現状 タイ政府は保健分野の政策として「公衆衛生のための国家20年戦略 2017−2036」を策定し、@ヘルスプロモーションの強化、Aヘルスケアサービスの強化、B人材の強化、Cガバナンスの強化を大きな柱として、アジアで上位3か国に入る強靭な保健システムを構築することを目標として掲げている。
タイにおいては、高齢化への対応が喫緊の課題である。2020年の高齢化率(全人口に占める65歳以上人口の割合)は13%、2035年には高齢化率は23.1%となり、今後15年のうちに超高齢社会に突入すると予測される。現在、タイにおける高齢者に対する支援は、コミュニティの病院による支援や高齢者長期ケアプログラム等が展開されているが、寝たきり高齢者を含め、介護を必要とする高齢者のケアは基本的には家族及びコミュニティー(保健ボランティア等を含む)に依存する部分が大きいと言える。今後の高齢化の進展に伴う要介護高齢者の増加に加えタイではすでに少子化が進んでおり(合計特殊出生率1.4)、家族構成も変化していることなどから、家族及びコミュニティーを中心とした高齢者支援は質・量ともに限界を迎えると考えられる。また、医療や介護だけでなく、高齢者の生活支援や健康増進・介護予防の取組についてもニーズが増大することが見込まれる。高齢者施設としては、公的には、身寄りのない高齢者向け施設(介護を目的とした公的施設ではない)及び地方自治体に設置が進んでいるデイケアサービスセンターがある。日本のような要介護高齢者向けの長期滞在型の介護施設はタイでは一般的ではなく、自宅で家族が介護をすることが一般的であるため、退院した患者が家に帰るまでの間のリハビリや短期滞在を行うタイプの介護施設へのニーズが確認されている。また、介護を必要としない高齢者向けの住宅建設も盛んで、高齢者にとってより快適な住環境を整備するためのユニバーサルデザインの導入やITの活用等、日本の経験が求められている。
■コロナ含む感染症に強い社会造り
タイにおける新型コロナの影響に関しては、タイでは保健省及び他関連機関からなるCCSA(政府感染防止対策チーム)が主導的な政策を実施し、感染が確認された初期段階から緊急事態宣言を発令し各施策に取り組んでいる。また、タイにおいてJICAは、古くは国立衛生研究所への無償資金協力、近年は保健省医科学局、大学等と共同でHIV、デング熱、結核といった感染症に関する先端研究及び研修事業を実施してきた。そのような背景から、感染症
解決すべき課題 ・介護サービスや高齢者の生活の質の低さ
・介護サービスの人材不足
・家族介護者への介護負担(介護疲れ)
・リハビリテーションを含む高齢者の介護予防の不足(認知症対策含む)
・新型コロナに係る検査・ワクチン等、衛生技術、遠隔診療等の技術や施設不足
活用が想定される製品・技術・ノウハウ ・介護人材の育成(カリキュラム、Eラーニング・コンテンツ等)
・介護サービスを補完するIT技術、施設、人材育成
・高齢者向け施設(小規模多機能型居宅介護等)の運営・コンサルティング
・介護、認知症予防・リハビリテーションのための人材育成・器具の整備
・新型コロナに係る検査・ワクチン等の開発技術
・手洗いや廃棄物処理等の衛生教育・技術
・遠隔医療を可能にするIT技術や施設等
市場規模 タイでは一人当たりGDPが2017年の3,972ドルから2018年には7,187ドルに伸び、可処分所得が年間15,000ドル超35,000ドル以下の上位中間層が既に全人口の約4分の1に拡大している*。また、2022年までに個人消費支出が30.7%増加するとも言われている**。一方で2022年には65歳以上人口割合が14%を超える高齢社会に突入されると予想されており、核家族化や共働き世帯が増加したことにより、都市を中心に介護サービスを利用する世帯も増えている。タイの大手私立病院を中心に介護事業展開が活発化、看護・介護関連のコースを新設する学術機関の動きも見られる。

*Euromonitor International World Consumer Lifestyle Databook 2009
**Bangkok Post 2018年11月13日
関連する公的機関 保健省、保健省傘下の病院、大学病院、
関連するJICAの方針 プログラム:社会保障(高齢化対策、社会的弱者支援)プログラム
関連するODAプログラム・プロジェクト プログラム:社会保障(高齢化対策、社会的弱者支援)プログラム
技術協力プロジェクト:高齢者のための地域包括ケアサービス開発プロジェクト(S-TOP)、グローバルヘルスとユニバーサルヘルスカバレッジのためのパートナー
シッププロジェクト フェーズ2(GLO-UHC 2)
フォローアップ調査:「効果的な結核対策のためのヒトと病原菌のゲノム情報の統合的活用プロジェクト」フォローアップ協力
草の根技術協力:「健康長寿」長野県佐久市の地域包括ケアを活かしたタイ、チョンブリ県サンスク町における多職種連携による高齢者ケア・プロジェクト
留意点 ・家族やコミュニティーでの介護が中心であるタイでは、日本のような入所・居住系の介護サービス施設に自分の家族を預けることへの抵抗感がある。施設を活用した介護サービスを検討する際は、この現状と将来のニーズを踏まえる必要がある。
・日本式介護は、タイで実施されている介護サービスの内容と比較すると、技術的に高度な介護サービスとなるため、高額な値段設定となることが想定される。日本の介護保険のような介護サービスに特化した制度がない中、高度な日本式介護のサービスの質を保ちつつ現実的なコスト設定を行い、また富裕層のみならず中間層などもターゲットに含みサービス提供できるよう検討と工夫が必要である。
リスク ・タイでは、日本の医療資格保持者(医師、看護師、理学療法士、作業療法士等)が直接患者を施術することが認められていない。
備考
参考動画

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